鉄仮面の鍵は奪った。
さあ、急いでシャトレに行かなくては。国王陛下が処刑されてしまう!
しかし、まてよ。
そもそもこんな事態に陥ったのは国王陛下がしっかりしていないからではないか。大体、陛下は存在感がなさ過ぎる。シャンティーで会ったあの調子のいい男が言ってた「帽子の上の羽根飾り」、アレは名言だったな。
それに、かつらは似合ってないし、謁見の間のカーテンだってハート柄なんて。趣味が悪い。おっと、話が逸れてしまった。
でも、フランソワの事がなかったらあんな陛下に仕えるなんてまっぴらごめんだ。銃士隊は楽しいけど。
鉄仮面みたいに私利私欲のために利用しようというのではないが、フィリップ王子の方が国王に向いてるんじゃないかと私だって思う。なんたってフランソワが教育したお方だし。
処刑は10時だったな。まだかなり時間がある。
どうせ今シャトレに行っても警備が厳重で中には入れんだろう。
10時ギリギリまで待ってから行くとするか。
極限の状況の中で少しは御自分のことを反省されるがよい。
まあ、首が落とされる前には助けてやるさ。
ギリギリのところでお助けした方が、私達銃士のありがたみがわかるだろう。
シャトレの外で様子を伺う。
いよいよ処刑の開始だ。そろそろ飛び出そうかと思っていたら聴聞僧に化けていたダルタニャンとポルトスが一暴れしだした。
アトス、ロシュフォール伯爵、リシュリューも出てきて戦っている。
よし、行くか。なんといっても鉄仮面が国王陛下であることを証明できるのは私しかいないのだから!
私は勢いよく中庭に飛び出していった。