ブリキ缶

〜果てしない思い込み それはそれでエナジーでした〜 (♪「DISCO80's」byKAN )

出会い編

小学生の頃、学研をとってました。
6年生も半ばを過ぎた忘れもしない10月号、「学習」誌でいきなり新連載が始まりました。
その名も「アニメ三銃士」。
初めはいつものようにパラパラとめくりました。
当時から文章を読むという行為が苦手だった私は、学研の読み物もいつもは実に読み飛ばしがち。
その私が何ゆえにこの一読み物に魅かれたのか。

まず目に飛び込んでくるのは、その扉絵のダル&ロシナンテの姿。
馬と少年。その頭には羽根飾りのついた帽子。
そしてそのうたい文句。
“17世紀のフランスを舞台にしたパワフルな物語がスタート!”
そして次のページに登場人物紹介が。私がそこで見た物とは…!

ダルタニャン・15歳 → “誠実” “とっても優しい性格はみんなをひきつける”
コンスタンス・16歳 → “ダルタニャンの永遠の恋人”

年上の彼女だ。しかも永遠の恋人とな!?(←ここポイント)
見知らぬ国の見知らぬ設定。なにやら聞いたことのないへなちょこりんな名前。なのに誠実。(←ここもポイント)
その耳慣れなさといい、見慣れなさといい、当時の私にはどうやらツボだったらしいのですね。

たかがこれしきの取っ掛かりで、アニ三は一気に私の心を奪ってしまったのでありました。
…おいまだ学研の文章読んでないだろう、COASAさんよ。

その学研の連載も、たった6回っきりで小学校を卒業するとともに終了してしまったのでした。
そ、そんな〜。

素晴らしき TV Age 編

待ち望んでいたテレビでの放映第一回目は夢のように過ぎていきました。
期待を裏切らない内容、キャラたちの美声に大満足!
こうしてテレビにクギヅケLIFEが始まるのです。

金曜日の夜がいつも待ち遠しかったものでした。
テレマップの音楽が鳴るとドキドキしたりして。30分なんてあっという間。息をつくのも忍びましたとも。
見逃すなんてアナタ、そんな恐れ多い事!
我が家は一介の小市民らしく何かにつけて遅れをとっていた一家だったのでビデオデッキなんてハイテクなモンはむろんありませんでしたが、そこは愛と根性で。
ただ2回、やむをえない事情から見逃しましたが、別の場所で「ああ、今頃やってる」なんて溜め息ついてました。

そして、いつの間にかメモ帳にサブタイトルと内容を簡単に記録するようになり、さらにイメージソングをチェックしたりなどして、登下校中や、夜にはふとんの中でと、とにかくデータを暗記する日々。(怪しすぎます)

この頃には、それはもうアニ三にどっぷりつかってました。
この頃の日記を読むと、夢はアニ三のビデオを手に入れること。(涙)
描く絵といえばダルタニャンかコンスタンス。
私ほどアニ三を好きな人は日本中探したっていないだろうと自負してました。(そりゃこんな怪しいヤツはいなかったろうよ)

そんな私にもプライドっつうもんがあったんですね。あったんですよ奥さん!
このオタクっぷりが恥ずかしくて、親兄弟、友達にもひた隠しにしてました。
今思えばこのプライドが小憎らしいっていうもんです。
ああ、環境がそろっててこのプライドさえなかったら、今頃相当なアニ三グッズを集めていただろうと自信を持って言えますよ。ホント。

私んちは小さな町の片田舎にありました。
なにげにドイ・ドイ・ドイナカ大農村(♪「ドラ・ドラ・ドライブ大作戦」byKAN)でした。
ですから近くに本屋もない。ということは三銃士本をはじめ、アニメ雑誌など買える環境じゃない。(それ以前にアニメ雑誌の存在を知っていたかも疑問だが。)
たまに本屋へ行くチャンスがあっても、友達同伴、親同伴。
そこにあの余計なプライドがあぁぁ〜〜。三銃士関連の本を探す事すらできなかったのでした。(溜め息)

のどから手が出るほど欲しかったグッズたち。
スーパーでアニ三ティッシュを、塗り絵を、文房具を見かけては見て見ぬ振りをする私。
一応中学生になってしまってましたから、プライドにも磨きがかかってます。ええ、そんなお年頃。
そんな私が唯一手に入れたグッズというのは、幼い従妹が買ってもらってたチューイングキャンディーの包み紙(←1枚だけもらった)。
そんなもの近所の駄菓子屋でだって買えるのにね。…それほど厄介だったんです、私の果てしなきプライド。
そして今でもその包み紙を捨てずに取っておいてあるとは…われながら泣かせる。
買ってさえいたら、ティッシュの包装袋だって絶対に捨てなかっただろうなあ。(それ以前に使わないだろうけど)

もちろん映画なんて夢のまた夢。自分とは無縁だと思ってましたもん。
小心者の中学生が電車に30分揺られて右も左もわからぬ都会(というほどでもなかったんだけどね)へ出て、しかも1人でアニメ映画なんて(プライドがあぁぁ〜)見られるはずがない。
「アラミスの冒険」春休みは映画館で会おう?どうせ私にゃ関係ナッシングってな感じでね。

そんな私が別冊アニメディアとフィルムコミックと映画パンフを友人に借りました。
特に仲よくしてたわけじゃなかったけど、何かのきっかけでたまたまその友人の家に行ったんですわ。
当時の私にしてみたら、その友人の家は宝の山のような家でした。
アニメグッズがあふれんばかりに置いてあるんですもん!
そのときばかりはプライドもなんのその、確か1ヶ月くらいネバって借りて、メモるもんメモって、写すもん写して(もちろん手書き。コピー機も身近になかった時代でした。)、泣く泣く返しました。
その友人は私の異常なる好奇心にあてられたのか、アニメディアの付録のダルタニャン付きカセットレーベルをくれました。
これがまさに中学生時代の、唯一の大きな収穫でありました。

そしてようやく控え目にプライドを捨て始めたのは、高校生になってからのことでありました。

グッズ探し編

高校に入り、誘われるがままに(主体性ゼロ)何となく入部した演劇部。
すると部員の面々は、ありがたいことにその道(どこかな?)にツウな方ばかり。
その心意気に触れ、勇気をいただいたワタクシは、ついに隣町の古本屋(←唯一知ってたトコ)へ足を運ぶ事となり、アニメージュのバックナンバーを続々ゲット。

部活の用事でちょろっと遠くの市街に出たときに、たまたまアニ三のCDを見つけてしまったものの、手持ちがなくてあきらめた、なんて事もありました。
半年後に同じCDショップに行っても見つからず、あの時恥を偲んで、一緒にいた友人にお金借りときゃよかったと悔やまれてならなかったもんです。
(しかし、あの時の記憶だとアニ三のCDは2種類あったような気がするんだよなあ…。記憶違い?)

大学生になり、市街に通学するようになったため、更にフットワークが軽くなります。
バイトも始め、ふところもだいぶあったかくなりました。
グッズを求めて古本屋やレンタル屋をめぐります。(自転車で)
高校時代に買い損なった例のアニ三CDも、偶然訪れた土地でようやくゲット!
アニ三ビデオも5巻までビデオレンタル屋で入手しました。同店で長山洋子の「星に願いを」も。(でもそのレンタル屋、1年後にはつぶれてた…)

BSで再放送をやると知り、BSを持ってた後輩に録画を頼み込みましたよ。
もう、恥も外聞もあったもんじゃありません。でも全話とはいかなかった…。やっぱりね。なかなかね。
そのうちに協力的な後輩も現れて、中古ビデオを手に入れてくれたりしました。持つべきものは従順な後輩だわね。
ようやくビデオが全巻そろったのは社会人になってから。
中学の時に友人に借りた例の別冊アニメディアも、古本屋のしらみつぶし探索にてついにGet!!
この時私は、もう東海大地震がいつ来てもいいと思ったものでした。

この時の私はまだネットというものを知らなかったからね…。

原作編

話はちょっくら小学生時代まで遡ります。
初めは三銃士が文学として存在している事を知らなかったような気が…。お世辞にも読書家じゃなかったし。
そのくせ、放課後は友達と図書室に入り浸る習慣があったんですよ。
だから文学としての三銃士との初めての出会いは小学校の図書室。
友達が読んでて、「コンスタンスって結婚してるんだって」とかなんとか周りにいた子たちに話してたのを、私が目ざとくならぬ耳ざとく聞きつけて、どれどれ、と見せてもらったような。

新書サイズで、女の子受けするかわいらしい挿絵が入ってました。
上下巻を一気に読んで、コンスタンスが死ぬ場面でショックを受けた記憶がよみがえります。
小学生が一日で読んじゃうくらいだから、子供向けにかなり内容が端折ってあったんだろうなあ。
今探しても見つからないんだなこれが。

次に手を出したのが、家にあった少年少女文学全集に入ってた三銃士。
(あの全集にもいろいろな作品が入ってたけど、結局読んだのは三銃士の他に2,3作品だったな…。)
これはちゃんと第1部の全訳が書かれてたと思います。(実家で探したがなぜか行方不明)
何となく読んで、ふ〜ん、と思っておしまい。おいおい何か響くものがなかったのかい!
印象に残ってるのはブリズモンの死くらいだったかな…。コワかったなあ、あれ。

というわけで大学生になるまでそれ以上進めませんでした。ひたすらアニメで。
そのくせ何となく三銃士のお導きで文系→文学部→仏文方面に進学しちゃうし。
ここまで来たら卒論もダルタニャン物語で行くしかないっしょ。他に興味あるものも出てきそうにないし。
って感じできちゃったわけです。

じゃあ、ダルタニャン物語読まないと…、と1年生の時大学の生協にて講談社文庫を一括購入。
電車の中で読んだのかなあ。一気には読まなかった気がする…。
第二部がいきなり“二十年後”っていうのを知ってひるんだ記憶があるし。(汗)

でもやっぱり訳がよかったんでしょうねえ。気が付けばビュンビュン読み進めてて、
中年になったオトナのダルの魅力に堕ちてゆきました。
落ち着いていて、色恋に振り廻されず、したたかで、間違ったことはしない、弱みを見せない。
そんなところは今でも崇拝中です。ハイ。

学生時代は文系人間を装って図書館に通いつめてました。大学の図書館から、県立図書館、市立図書館、町立図書館、国会図書館も行きました。
検索するのが楽しくて、とにかく三銃士に関連した本は借りまくって、コピーしまくりました。
アニ三グッズゲットの目的も含めて、古本屋からレンタル屋、CDショップ、本屋も片っ端から回りました。
遠くの土地に出かける機会があれば、駅でタウンページからそれらしき店をチェックして赴きました。
本、ビデオ、CDと名のつくところはとりあえず入りました(今でもこの癖は抜けない)。
ついにアニメイトにも潜入(まさに「潜入」くらいの勢い。でも収穫はなかった)。
たいてい手に入らないものはなかったので、その頃はそれが当たり前だと思ってましたが、
今では手に入らないものが多いこと。かなり恵まれた環境だったんだと卒業してから痛感したもんです。

そうして4年生になり、教授たちの不評を浴びながらも、苦し紛れに自己満風卒論を書き上げ、どうにか卒業。
就職して、一瞬三銃士世界から離れたと思いきや、その情熱は燃え上がる一方。
アニ三ビデオのセリフを拾う作業を細々と続けたり、まだまだ勉強不足だ、といきなり思い立って“ダル物総まとめノート”なるものを作り始め、挙句の果てに今の会社じゃ時間が取れん、と会社まで辞める始末。(ホントに上司にこう説明したし。汗)
そんな時パソコンを購入、ネットで銃士倶楽部の存在を知ってしまったのです!
さあ、これからが怖いですね〜。

客観的に見てもおっそろしい三銃士バカっぷりでございます。近づくとうつりますよ。気をつけてくださいよ。
まさに私の人生は三銃士とともにありきなんです。おそらくこれからもそうです。断言しちゃいます。

(2002-04-20作成)