アニャン式ダルタニャン物語

LA VIE AVENTUREUSE DE DARTAGNAN

第三部 「ブラジュロンヌ子爵」

第6巻「将軍と二つの影」

王国なき国王

前の物語から10年後。

国王ルイ14世の旅の行列は、叔父のガストン・ドルレアンの住むブロワに滞在する事になった。イギリス国王チャールズ1世が処刑され、その息子チャールズ2世は、数々の追跡から逃れフランスにやって来ていた。偶然ブロワに来ていた彼は、従弟であるルイ14世に、イギリスの王冠を奪い返すための支援を頼もうと、単身乗り込み直接交渉する。しかし、マザランに政権を握られ何の力も持たないルイは、そのままチャールズを帰す事しかできなかった。
それを傍観していた銃士隊副隊長ダルタニャンは、宮廷に愛想を尽かし、暇乞いを申し出て宮廷を去る。

ルイと別れたチャールズは、偶然ラ・フェール邸の前を通りかかり、かつて父を救うために力を注いでくれたアトスに会う。折りしもアトスは、チャールズ1世の処刑台の下でことづかった、ニューカッスルの城の地下室に埋まっている金貨を探しにいくつもりだった。チャールズの話を聞いたアトスは、現在モンク将軍の陣地となっているニューカッスル城へと出かける。

イギリス王政復古の裏側

退役したダルタニャンは、三銃士に会いに出かけるが、アトスはちょうどイギリスに発ったところ、アラミスはヴァンヌにいるといい、ポルトスもアラミスに呼ばれて出かけたところで、誰とも会うことができない。

パリへ戻ったダルタニャンは、プランシェに会いに行く。今やすっかり金持ちとなったプランシェに、チャールズ2世をイギリス王に復位させる計画を話して出資させ、早速計画を実行するダルタニャン。
10人の男を揃え、彼らをうまく操りながら、漁師に扮してイギリスのモンク将軍の陣地へ乗り込んだ。

ちょうど同じ頃、アトスもまたチャールズ1世の金貨を掘り出すためにモンクの陣にやってきていた。アトスは全てを話すことでモンクの信用を得、彼の目の前で金貨を掘り出すことに成功。
しかし、2人が別れた直後、モンクはこつぜんと姿を消す。実はダルタニャンがモンクを箱に詰め、海を渡ってチャールズ2世のいるオランダに連れ去っていたのだった。

チャールズにモンクを引き合わせるダルタニャン。モンクの身代金を期待していたダルタニャンだったが、チャールズはあっさりと2人をイギリスへ帰してしまう。
イギリスへ戻ったダルタニャンはアトスと再会。モンクの怒りを買ったと信じて疑わないダルタニャンだったが、モンクは意外にもダルタニャンに好意的だった。

ロンドンにはランバート将軍が陣を敷いていたが、ランバート軍の兵士は相次いで脱走、形勢はモンク軍に傾く。ダルタニャンとアトスの行動に心を動かされたモンクは、チャールズ2世をロンドンに迎え入れたのだった。

復位したチャールズ2世から、アトスは勲章を授けられ、モンクは副王の肩書きを受ける。そしてダルタニャンは、モンクの身代金として30万ポンドをチャールズから与えられ、さらにモンクからは家と土地を与えられる。
フランスに戻ったダルタニャンは、めでたくプランシェと金貨を山分けしたのだった。

第7巻「ノートル・ダムの居酒屋」

ルイ14世の親政開始

宰相マザランの病状が悪化する。マザランは、腹心コルベールのアドバイスで財産遺贈書をルイに渡すが、コルベールの読み通り、ルイはそれを受け取る事をせずマザランに返したのだった。感激したマザランは、今後宰相を用いないようにと忠告を残して息を引きとった。

翌日ルイは、自身で国務を行うと宣言。ルイから財務監督官に任命されたコルベールは、財務卿フーケの身辺を洗い始める。やがて、フーケがベル・イールに要塞を築いているという噂がルイの耳にも届くようになる。
ルイは渋るダルタニャンを銃士隊に呼び戻す事に成功。早速ベル・イールに偵察に出かけるよう命じる。

財務卿フーケ

その頃、フーケの友人デムリとリョードの死刑が、コルベールによって計画されているという噂がフーケのもとに舞い込む。2人を救い出すために、フーケは、処刑場で騒動を起こす計画を立てる。

処刑の行われるグレーヴ広場には、ダルタニャンの持家である「聖母像の居酒屋」があった。
ベル・イールに出かける前に家賃の取り立てに訪れたダルタニャンは、フーケの仲間たちが「聖母像の居酒屋」に火を燃え移らせようとしているのを目の当たりにし、必死に止めようとする。その結果、デムリとリョードは予定通り処刑されてしまい、救出計画は失敗。フーケのもとにもその報が伝わる。

ダルタニャンはルイの指示通り、フーケのもとに年金を受けにやって来る。フーケには出せないだろうというルイの予想に反し、ダルタニャンに莫大な額の年金を気前よく渡すフーケ。しかもそれは、ダルタニャンのせいでデムリとリョードの救出計画が失敗したことを知った上での行動だった。ダルタニャンはフーケに好感を持つ。

ブルターニュ遠征

ブルターニュに向けて出発するダルタニャン。旅人を装い、名前もアニャンと縮めることにする。漁に出る船に乗り、ベル・イールに上陸したダルタニャンがそこで見たのは、大きな石を軽々と持ち上げているポルトスだった。
ダルタニャンの誘導訊問に、ベル・イールの秘密をポロポロと話してしまうポルトス。ダルタニャンは、ベル・イールを築いている本当の技師がアラミスであると確信する。

ヴァンヌの司教となったアラミスと、司教邸で対峙したダルタニャンは、アラミスから何とか情報を引き出そうとするが、アラミスは、ベル・イールにも行った事がないし、フーケもコルベールも知らないと言い張る。

夜、ダルタニャンが眠るのを待ってポルトスを叩き起こしたアラミスは、フーケに手紙を渡すようにとポルトスをパリへ向けて慌だしく出発させる。翌朝アラミスは、ダルタニャンにポルトスを探しに行かせ、その隙に自分もパリに向かう。戻ってきたダルタニャンはいっぱい食わされたとようやく気づき、急いで2人を追う。

フーケのいるサン・マンデに到着したアラミスは、ダルタニャンより先に国王に会い、ただちにベル・イールを国王に献上するようフーケに助言。ルーヴルへ馬を飛ばしたフーケは、アラミスに言われた通り即座にベル・イールを献上する。フーケが退出しようとした瞬間、ダルタニャンの到着が取り次がれた。
ルイがベル・イールの事情に詳しいので、別の男が派遣されたのだと勘違いし怒って辞職を申し出たダルタニャンに、ルイは銃士隊長の辞令を渡したのだった。

王弟妃アンリエットの渡仏

ガストン・ドルレアンが亡くなり、ブロワの若者たちはこれを機に華やかな宮廷に乗り込もうと奔走する。コネを駆使した結果、ルイズと、ルイズの友人モンタレー嬢は、王弟妃付きの職を、モンタレーの恋人マリコルヌは王弟付きの職をゲットし、そろってパリ入りを果たす。

王弟フィリップの率いる一行は、イギリスから嫁いでくる王弟妃アンリエットをル・アーヴルに迎えに行く。王弟妃の美しさに夢中のバッキンガム公とギーシュを中心にトラブルが相次ぎ、そこへラウルとワルドの対立やら、王弟と王弟妃の性格が合わないことやらが重なって、王弟一族の新生活は波乱の幕開けとなる。

第8巻「華麗なる饗宴」

アラミスの謎の行動

旧友のベーズモーがダルタニャンに会いに来た。彼はアラミスの計らいでバスチーユ監獄の長官職を手にしていた。前職者への心づけを支払う役もアラミスが買って出ていたのだが、最後の支払いの期限が明日に迫っているのにアラミスが姿を現さないのだと話すベーズモー。ダルタニャンはベーズモーに対するアラミスの行動を不審に思う。

一方、フォンテーヌブローでの2週間の宴会を計画した国王ルイ14世は、財務卿フーケに莫大な金額を所望する。平然とした態度で快諾するフーケだが、その胸中ではひどく悩んでいた。フーケがアラミスに相談すると、アラミスは自信たっぷり、バスチーユの長官に顔が利くと都合が良いから、ベーズモーのために大金を用意するようにとアドバイスするのだった。

ベーズモーに会いに行くアラミス。ベーズモーは喜びのあまり、アラミスに囚人名簿を見せてしまった上に、規則を無視してバスチーユを一回り案内してしまう。
ひどく扱いの良いマルキアリという囚人に会うアラミス。年齢も家族も自分の名も知らないという。アラミスは彼にはさして興味を示さず、セルドンという囚人に深く同情しながらバスチーユを後にする。

フーケの恋人ベリエール夫人は、フーケが国王から大金を要求された事を知り、フーケを救うため自分の宝石類を全て手放し、フーケに受け取らせたのだった。

フォンテーヌブローにて

宮廷では、王弟妃アンリエットの振る舞いに王弟フィリップが嫉妬。兄である国王ルイが、2人のために一肌脱ぐ事になる。しかし、国王までもが王弟妃に心を奪われてしまう。

そしてフォンテーヌブローでの祝宴の日々が始まった。王弟妃に接近する国王。王弟の嫉妬を予想した2人は、この恋のカムフラージュに、王弟妃の侍女であるルイズを使おうと相談する。しかし一方でルイズは密かに国王を慕っていた。始めは演技でルイズに近づいた国王も、次第にルイズを愛するようになる。

コルベールに会ったフーケは、コルベールにヴォーで饗宴を開くようたきつけられ、アラミスのアドバイスに従いそれを引き受ける事にする。

その夜、フォンテーヌブローの近くにある『孔雀亭』に、アラミスが瀕死の坊さんを連れてくる。それはイエズス会の管区長である長老だった。長老は後継者を決めるため各国から集まった数人の候補者と面会するが、全ての人物に絶望。最後に長老の前に現れたのはアラミスだった。アラミスがある秘密を明かすと、長老は後継者をアラミスに決め、管区長の仕事と全ての秘密、そして管区長の証である指輪を託し、息を引きとる。

国王は、ルイズに婚約者ラウルがいたことを思い出す。ラウルは国王の命令でイギリスへ渡ることになる。

第9巻「三つの恋の物語」

続・フォンテーヌブローにて

ルイズに取り入るようフーケに忠告するアラミス。しかし、ルイズと国王の仲が本物であると気づいたアラミスは、作戦を変更し、フーケがルイズに宛てた手紙を取り戻そうとするが、腹心だった男がフーケを裏切ったため、その手紙はコルベールの元へ渡ってしまう。

フォンテーヌブローの生活に退屈したダルタニャンは、国王に休暇を願い出てプランシェのもとに転がり込む。プランシェは、フォンテーヌブローにある自分の地所にダルタニャンを連れて行くことにした。

フォンテーヌブローに出かける前に、ダルタニャンはベーズモーに会いに行く。ベーズモーから何も聞き出せなかったダルタニャンは、バスチーユから出てきた一人の兵士の後をつけ、サン・マンデのフーケ邸へ辿り着く。フーケ邸へ潜り込んだダルタニャンは、半ば監禁状態のポルトスを発見。
ポルトスを連れ出したダルタニャンは、共にプランシェの別荘へ出かける。翌朝プランシェの別荘の窓からダルタニャンが目撃したのは、アラミスとシュヴルーズ夫人の姿だった。

ダルタニャンは、ポルトスを国王に会わせるためフォンテーヌブローの城へ連れて行く。2人は国王の御前でフーケとアラミスに会う。2人の姿に青くなるアラミス。謁見の後ダルタニャンは、アラミスからフーケの臣下になるよう勧められるが、それを断る。アラミスがまだ何かを隠していることを感じ取るダルタニャン。一方でアラミスは計画を急ぐ事にする。

その後もフォンテーヌブローでは、ギーシュが、ラウルとルイズをめぐってワルドと決闘したりと波乱が続くが、そんな祝宴の日々も終わり、一行はパリへと戻ったのだった。

国王とルイズの恋

国王のことで王妃に泣きつかれた太后と王弟妃は、ルイズを呼び出し厳しくとがめる。その後、国王とも仲違いをしてしまったルイズは、いたたまれなくなって真夜中に王宮を抜け出し、尼僧院へ向かう。翌朝、ルイズが部屋にいないのに気づいた国王は、行方を突き止めルイズを迎えに行く。
その一件からますます仲睦まじくなった2人に、王弟妃はことあるごとに邪魔をする。

国王とルイズの恋を実らせるため、マリコルヌが一計を案じる。ルイズとモンタレーの部屋を王弟妃の部屋から遠ざけさせ、ルイズの部屋の下に国王の腹心サン・テーニャンを引っ越させた。2つの部屋の間に揚げ板と階段を取り付け、お互いの部屋を行き来できるようにしたのである。全ての計画は、王弟妃に気づかれないようこっそりと進められた。マリコルヌの読みは見事ハマり、国王とルイズは至福の時間を得ることができたのだった。

その頃、イギリスの宮廷にいるラウルのもとに匿名の手紙が届く。ルイズが他の男性を愛しているという内容のものだった。ギーシュからもフランスに帰ってくるようにとの手紙が届き、同時に王弟妃からもラウルをフランスへ呼び戻すための飛脚が来る。イギリス国王から許しを得たラウルは、フランスへと帰国する。

パリに戻ったラウルはルイズに会いに行き、国王とルイズの逢引現場に踏み込んでしまうのだった。

フーケの不正疑惑

ある夜、アラミスはシュヴルーズ夫人に会う。シュヴルーズはマザランからの手紙で、フーケが国庫から3,000万ものお金を不正に流用しているのを知ったとアラミスに告げる。フーケと真っ向から対立する姿勢を見せるシュヴルーズは、太后にその手紙を見せに行くと言い残してアラミスのもとを去る。

第10巻「鉄仮面」

窮地のフーケ

そのままコルベールに会いに行くシュヴルーズ夫人。コルベールを自分の求めていた人物だと直感した彼女は、フーケの違法を証明する手紙があると話して味方につける。

一方フーケの友人たちは、お金に困っているフーケに、検事総長職を売り出すよう勧める。フーケはその職を欲しがっていたヴァネルに会い、あっさりと譲ってしまう。そのお金で、フーケは以前ベリエール夫人が売り払った宝石類を買い戻し、夫人を感動させたのだった。

アラミスは、シュヴルーズが話していたマザランの手紙について憂いていた。フーケはそのお金の用途を明確に説明するが、保管していたはずの受領証が盗まれていた。この種の裁判は検事総長が審理するのだと言って安心させようとするアラミスに、フーケは、自分はもう検事総長ではないことを告げる。真っ青になるアラミス。

ヴァネルから検事総長職を取り戻そうとする2人だったが、実はコルベールの味方だったヴァネルから取り戻せるはずはなかった。アラミスはヴォーの大園遊会に全てをかけることにする。アラミスの意図がわからないフーケだったが、全てを彼に一任する事にする。

ラウルの失恋

王弟妃に呼び出されたラウルは、全てを聞き、証拠としてルイズとサン・テーニャンの部屋を見せられる。

一方アトスは、ラウルとルイズの結婚の許しを請いに国王に会いに行くが、国王は聞き入れない。アトスは国王への忠誠を捨てると宣言し、剣を2つに折って国王の前に投げ捨て退出する。

しばらくして、ダルタニャンが国王の命令を受けアトスを逮捕しにやってくる。ダルタニャンはアトスをイギリスに逃がそうと考えるが、アトスは聞き入れようとしない。2人はバスチーユへ向かう。
バスチーユでは、アラミスがベーズモーと食事を共にしていた。ダルタニャンは、アトスをその場に残して国王のもとへ戻ると、全身全霊をこめて国王を説得し、ついにアトスを釈放する令状を取り付ける。令状を持ってバスチーユへ戻るダルタニャン。
自由の身になったアトスは、ラウルと共にブロワに引退する事に決める。

もう一人の国王

一人バスチーユに残ったアラミスは、懺悔聴聞僧としてマルキアリに会いに行き、実は彼こそが国王ルイ14世の双子の弟フィリップであるという秘密を明かす。まずはフィリップをバスチーユから出して見せると言い残し、そこを出るアラミス。

ヴォーの饗宴に着ていく服が用意できずに嘆いていたポルトスは、ダルタニャンと共に王室御用の仕立屋ペルスランを訪ねる。そこへやってきたアラミスは、国王の衣装の出来上がり像を見せてくれるようペルスランに頼んでいた。国王の肖像画を描かせて、国王を驚かせるためだと説明するアラミスに、何か裏がありそうだと感じ取るダルタニャン。

アラミスはフーケに、セルドンという青年をバスチーユから出すための依頼の手紙に署名するよう頼む。セルドンの母親に渡すお金を用意した時点で、フーケは完全に一文無しになってしまう。

バスチーユへ向かったアラミスは、ベーズモーを巧みに騙し、セルドンの代わりにマルキアリを釈放させるよう仕向ける。
マルキアリことフィリップを馬車に乗せ、森の中まで連れてくるアラミス。今の国王の代わりに王位に立つようフィリップを説得すると、考えた末にフィリップは承諾。2人はヴォーへ向かう。

ヴォーの饗宴

国王とその一行がヴォー入りをすると、至れり尽くせりのもてなしをするフーケ。

アラミスに会ったダルタニャンは、秘密の計画を持っているのだろうとアラミスに単刀直入に問いただす。アラミスは打ち明けようとしない代わりに否定することもなく、計画が成功したらきっとダルタニャンを仲間に入れると約束する。

ダルタニャンが去ると、アラミスはさっそくフィリップを呼び、床板をずらして国王の様子を探る。その時まさに、コルベールがフーケの横領を記すマザランの手紙を国王に見せているところだった。

翌日、怒りに駆られ、フーケを逮捕するつもりだと言い放つ国王を、ルイズがなだめていた。ルイズが去ったところに、コルベールが一枚の紙片を落として国王に拾わせる。それは、以前フーケがルイズにあて、その後盗まれてしまった例の手紙だった。それを読んだ国王の怒りは頂点に達する。
余興の花火には目もくれず、早々に部屋に戻った国王は、ダルタニャンを呼び、フーケを逮捕するつもりだとほのめかす。明日の朝改めて命令を出すと言ってダルタニャンを下がらせた後、ひとしきり暴れた国王は、そのままベッドに飛び込み寝てしまう。

大逆罪

寝台が沈むような感覚を覚え目覚める国王。仮面を付けた2人の男に連れ出され、地下道を歩き、言われるまま馬車に乗ると、馬車はバスチーユへ向かった。マルキアリを連れ戻したと言って、2人がベーズモーに国王を引き渡すと、囚人は獄房へと戻された。ヴォーに帰っていくこの2人の男はアラミスとポルトスであった。
我に返り、暴れ出す国王だったが、自分が国王だと叫べば叫ぶほど、誰も相手にしようとはしなかった。

一方、国王のもとを退出したダルタニャンはフーケのもとへ行く。フーケの人柄に触れ、彼を逮捕する事に良心の呵責を感じるダルタニャン。フーケもまた、ダルタニャンと知り合うのが遅すぎたと悔やむ。夜明けを待つ2人。

第11巻「剣よ、さらば」

にせの国王

国王が降りて行ったのと同時に上から降りてきたフィリップは、せり上がってきた寝台に身を横たえる。明け方、アラミスが戻ってきて、万事落着したとフィリップに報告する。

国王のもとへやってきたダルタニャンは、アラミスが国王の寝室から出てきたことに驚く。
フーケが特赦され、アラミスはダルタニャンと共にフーケのもとへ行く。訳のわからないダルタニャン。

ダルタニャンが去ると、アラミスは陰謀の全てをフーケに告白。ショックを受けるフーケだったが、アラミスの陰謀には乗らず国王を助け出す覚悟を決め、アラミスに逃げるよう言い渡しバスチーユへと向かう。
一転して逃亡の身となったアラミスは、ポルトスを連れベル・イールへ向かった。

フーケは、囚人となった国王に会いに行き、自分を激しくののしる国王を辛抱強く説得する。あっけにとられているベーズモーの前を通り、フーケは国王と共にバスチーユを後にした。

ヴォーではフィリップが巧みに国王を演じていたが、そこにバスチーユから戻ったルイが現れ、その場にいた一同は愕然とする。
フィリップはルイの命令でダルタニャンに逮捕される。コルベールが持ってきたルイの命令書には、フィリップをサント・マルグリット島へ護送し、鉄の仮面をかぶせるようにと書かれていた。フィリップを憐れむダルタニャンとフーケだった。

それぞれの行く末

ベル・イールに向かって馬を走らせるアラミスとポルトス。ブロワで、2人は馬を借りるためアトス邸を訪問。アラミスはアトスに全てを打ち明け、ベル・イールに向け、ポルトスと共に再び出発した。

2人が去ると同時にボーフォール公がアトスを訪ねてくる。アラビア征服に行くというボーフォール公は、ラウルを連れて行きたいとアトスに申し出る。それを聞いたラウルもまた、ボーフォール公について行きたいと言い出す。
翌日ラウルを送り出す決意をしたアトスは、ラウルと共にパリへ出かける。アトスはプランシェのもとへ行き、ダルタニャンが南仏へ向かったことを知る。

ボーフォール公から、アンティーブまで先発として行くよう命じられたラウルは、アトスと2人でダルタニャンの足跡を辿ることにする。
2人がサント・マルグリット島に辿り着くと、突然要塞の中から銀の皿が飛んでくる。皿を拾った2人に向けて銃が撃たれ、何とか弾をよけた2人の前に現れたのはダルタニャンだった。銀の皿にはフィリップの文字が刻まれていたのである。

ちょうど国王からパリへ戻るようにとの命令を受けたダルタニャンは、2人と共に島を離れパリへ。アトスとラウルは、トゥーロンで最後の晩を過ごし、翌日ラウルの乗った船はアフリカへ向けて出航した。

フーケの逮捕

国王は、ナントで行われる三部会の準備をダルタニャンに命じる。フーケは、この三部会が自分を破滅させるためのものだと感じ、ナントへ向けて慌しく出発する。
ナントへ一番乗りしてベル・イールへ逃れようと、全速力で船を走らせるフーケだったが、その後ろをコルベールの船がぴったりとつけてきた。
フーケがナントに到着すると、銃士隊は既に待機しており、国王もまもなく到着することになっていた。万事休すの立場に置かれるフーケ。ダルタニャンはフーケに対する好意から、何とかフーケを逃がそうと画策するが、フーケは実行しようとしない。

ついにダルタニャンにフーケの逮捕命令が下される。フーケの宿舎に向かったダルタニャンは、偶然、遠くに動く白い点を見て取った。それがフーケの乗る白馬だと確信したダルタニャンは、猛然とフーケを追いかける。死に物狂いの競走の末、ついにフーケに追いついたダルタニャンは、力尽きて倒れてしまうが、フーケは逃げようとせずダルタニャンを介抱する。
腕を取り合い、もと来た道のりを歩いて帰る2人。森の中で国王の用意させた格子付きの馬車にフーケを乗せ、ダルタニャンはアンジェへと向かった。

ロクマリアの洞窟

ダルタニャンの帰りを待っていた国王は、ベル・イールを接収しに行くよう命令する。1名たりとも逃してはならないという命令に、アラミスとポルトスをなんとか救おうと決心するダルタニャン。

ベル・イールでは、アラミスとポルトスが、脱出する舟もなく途方に暮れていた。
ついにアラミスはポルトスに真実を伝える。アラミスの言葉に落胆するポルトス。

ダルタニャンは、士官たちが受けているだろう命令の裏を掻いて、なんとか2人を救出させようと画策するが、全ての行動は国王とコルベールに読まれていた。万策尽きて絶望するダルタニャン。
ダルタニャンが辞意を表明した途端、新しい指揮官が命令を下し、ベル・イールへの砲撃が始まる。

アラミスは、ロクマリアの大地下道の出口にボートを用意させていた。ロクマリアの洞窟を進む2人の後を国王軍が追って来るが、アラミスの戦略とポルトスの腕力で、第1、第2小隊は音もなく全滅。
第3小隊が迫ってくると、ポルトスは火薬を出口付近に投げ込んだ。すぐにそこを脱出しようとしたポルトスは、突然脚に異常を感じ、がっくりと膝をついてしまう。爆風で落ちてきた岩をとっさに支えたポルトスだったが、ついに力尽き、同時に岩が沈下。それがポルトスの墓石となってしまう。
茫然自失のアラミスを仲間が舟まで運び込み、そのまま大型船に拾われたアラミスはスペインへと向かった。

アトスの幻影

ナントで国王と面会中のダルタニャンのもとに、アラミスとポルトスが逃走したとの報告が入る。喜ぶダルタニャンだったが、その後パリに戻り、アラミスの手紙によってポルトスの死を知る。国王は、ポルトスの死後の整理のためにダルタニャンに休暇を与える。

ピエールフォンでは、ポルトスの遺書の発表が行われた。遺書には、ラウルに全ての財産を与えると記されており、それを聞いて涙を落とすダルタニャン。人々の帰った後、ダルタニャンがムースクトンの様子を見に行くと、ムースクトンは、自分に与えられたポルトスの服の中に横たわり死んでいた。

一方、ラウルの出航以来すっかり老い込んでしまったアトスは、次第に寝たきりの状態になっていく。帰ってきたグリモーの様子からラウルの死を察したアトスが、再び夢幻の世界に立ち戻ると、アトスはそのまま息を引き取ってしまう。
そこへやってきたダルタニャンは、アトスの姿を見てすすり泣く。グリモーの持っていたボーフォール公からの手紙で、ダルタニャンはラウルの死を知ったのだった。

ダルタニャンの最期

4年後、国王の鳥狩りでブロワに来ていたダルタニャンは、国王の食事に招かれていたアラミスに会う。アラミスはアラメダ公爵となり、大使として国王に歓待される身になっていた。アラミスを、アトスとラウルの墓へ案内するダルタニャン。

コルベールも交え、談話する3人。ダルタニャンは、コルベールから元帥杖を与えるとほのめかされる。

春、12万の兵を率いてフリーズ地方へ向かったダルタニャン。
あと15分で町が降伏するだろうと言う時、ダルタニャンのもとにコルベールから小箱が届く。歓喜に酔ったダルタニャンが小箱を開けようとした瞬間、敵の一弾が小箱を打ち砕き、ダルタニャンの胸の真ん中に命中。どうと倒れるダルタニャン。転がり落ちた元帥杖を痙攣する手で握りしめ、ダルタニャンは帰らぬ人となったのだった。